住宅ローンの収入合算とペアローンの違いは?メリットとデメリットも併せて解説
更新日:2024年11月
目次
住宅ローンの収入合算とペアローンの違いとは?
「住宅ローンを申し込みたいけれど、購入したいマイホームの価格が予定より高くなりそうで自分ひとりで返済し続けていけるかちょっと不安」「できるだけ多く住宅ローンを借り入れたいけれど、自分の収入だけでは希望する金額が借りられそうもない」といった悩みを抱えている人は多いと思います。
そのようなときは、親子や夫婦で収入を合算して住宅ローンの契約を検討してみるのはいかがでしょうか。親族2人の収入を合算して住宅ローンを組む方法として「収入合算」と「ペアローン」という2つの方法があります。
SBI新生銀行では便利なシミュレーションツールをご用意しております。
住宅ローン シミュレーション収入合算とペアローン
収入合算とペアローンについて紹介する前に、まずは住宅ローンを申し込む際の条件を確認しておきましょう。SBI新生銀行では、以下の条件をすべて満たした人が住宅ローンを申し込むことができます。
- 借入申込時の年齢が20歳以上65歳以下、かつ、完済時年齢が80歳未満であること
- 団体信用生命保険(団信)への加入資格を有すること
- 前年度税込年収が300万円以上の正社員または契約社員であること
- 自営業の方については業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得(経費控除後の金額)を有すること
- 日本国籍または永住許可を有すること。なお、永住許可を有しない場合は、配偶者が日本国籍または永住許可を有し、かつその配偶者が連帯保証人となること
では、この条件を踏まえつつ、「収入合算」と「ペアローン」について詳しく解説していきます。
収入合算
収入合算は、一定の収入のある親族の収入を申込者(主債務者)の収入に合算する方法です。合算した金額をもとに住宅ローンの審査を受けることができます。収入合算者は、連帯保証人になることが必要です。
また、収入合算の申し込みでは、申込者(主債務者)が住宅ローンを申し込むときの条件をすべて満たしたうえで、さらに収入合算者(連帯保証人)が満たさないといけない条件があります。収入合算の申込条件をSBI新生銀行の例から見てみましょう。
- 申込時の年齢が20歳以上65歳以下であること
- 前年度の税込年収200万円以上
- 自営業の場合は2年平均200万円以上の所得を有すること(経費控除後の金額)
- 申込人の配偶者、父母、義父母、子、または子の配偶者のいずれかであること
*婚約者はローン契約時までに入籍を確認できる公的書類の提出が必要
ペアローン
ペアローンは、一定の収入のある同居親族と一緒にそれぞれが主たる債務者として住宅ローンを組む方法です。また、それぞれが相手の連帯保証人となります。
ペアローンでは、それぞれが住宅ローンを申し込み、そして、住宅ローンを申し込むときの条件もそれぞれが満たすことが必要です。さらに、以下の条件も満たさないといけません。こちらもSBI新生銀行の例をご紹介します。
- 合算の借入申込額が500万円以上
- 融資の対象となる物件を2名の共有名義とすること
- ペアローンを申し込む2名の関係が夫婦、または1親等
*婚約者はローン契約時までに入籍を確認できる公的書類の提出が必要
収入合算とペアローン、単独で住宅ローンを組むときの違いは、以下の表でご確認ください。
単独、収入合算の場合は、夫が主債務者、ペアローンは夫婦で申し込んだ場合の例です。
収入合算 | ペアローン | 単独 | |
---|---|---|---|
申込者 | 夫 | 夫・妻 | 夫 |
連帯保証人 | 妻 | 妻・夫 | |
返済 (口座引き落とし) |
夫 | 夫・妻 | 夫 |
団信加入 | 夫 | 夫・妻 | 夫 |
住宅ローン控除 | 夫 | 夫・妻 | 夫 |
- 同性パートナーをペアローンのペア相手や、収入合算者(連帯保証人)、担保提供者に指定することもできます。
収入合算とペアローンの詳細についてはこちらもご覧ください。
共働き夫婦の住宅ローン、どれが正解?
収入合算やペアローンは、親子でも組むことはできますが、一般的には夫婦で利用することが多い傾向があります。特に、夫婦共働きであれば、「2人で住宅ローンを返していこう」という意識も高くなることから収入合算やペアローンを利用する人々は少なくありません。ここでは、共働き夫婦の働き方の観点から、どのような形の住宅ローン契約が向いているかを考えてみます。
片方が収入の大半を担っている家庭(もう片方が被扶養者)→単独契約
例えば、SBI新生銀行の場合、収入合算者となる人の条件に「前年度の税込年収200万円以上」という項目があります。そのため、被扶養者の場合は、この条件を満たせません。ペアローンの場合でも、被扶養者では住宅ローンの申込条件を満たせないため、利用は不可です。
そのため、片方が収入の大半を担い、もう片方が専業主婦(主夫)、もしくはパートなど扶養を外れない程度の収入で働く家庭は「単独契約」しか選択できません。
夫婦で収入の差がある家庭→収入合算
同じ共働きの夫婦でも、夫婦間で収入の差がある家庭は、収入合算がおすすめです。収入が多いほうを主債務者、少ないほうを連帯保証人として契約します。収入合算にすると、単独で申し込みするよりも借入金額を多くできる可能性が高まります。
SBI新生銀行では収入合算者も前年度の税込年収が200万円以上であることが条件となります。
夫婦双方がある程度以上の収入で働く家庭→ペアローン
夫婦ともに、ある程度の金額の収入を安定的に得ている家庭には、ペアローンがおすすめです。住宅ローン契約は、2本(夫名義と妻名義)になります。また、片方が亡くなった場合は、亡くなった人の残債が団信によって完済されます。
共働き夫婦の住宅ローンの組み方についてはこちらの記事もご覧ください。
夫婦で収入合算、もしくはペアローンを検討する際はそれぞれのメリット・デメリットも確認しておくようにしましょう。
住宅ローン「収入合算」のメリットについて
収入合算で住宅ローンを組むメリットをご紹介します。
申告する収入額を増やすことができる
収入合算をすることで、金融機関へ申告する収入額を増やすことができるため、借入金額の増額が期待できます。自分だけの年収では、希望する借入金額に満たない場合は、収入合算を利用すれば、希望した金額を借り入れできる可能性が高まることは大きなメリットです。
収入をより多く申告したい場合・する必要がある場合は、2名の収入を合算して申告できる住宅ローンを選んでみてはいかがでしょうか。
契約する住宅ローンが1本で済む
収入合算は、契約する住宅ローンを1本で済ませることが可能です。そのため、事務手数料や諸費用もローン1本分の金額だけで済みます。手数料などの諸費用を節約しながら借入可能額を増額する場合に有力な検討候補となります。
なお、主債務者に万が一のことがあった場合は、団信ですべての住宅ローンの残債が返済されます。世帯主を主債務者にしておけば、万が一の際も家族に住宅ローンの返済義務が残らないため、残された家族は返済に苦労したり住むところを失ったりせずに済むでしょう。
住宅ローン「収入合算」のデメリットについて
収入合算には以下のようなデメリットもあります。
住宅ローン控除は主債務者(1人)しか利用できない
住宅ローン控除は、購入した物件への入居から一定期間、年末に住宅ローン残高がある人が利用できる税額控除の制度です。住宅ローン控除の概要については後述します。
収入合算を利用した場合の住宅ローン控除の適用対象者は、主債務者のみとなります。収入合算によって借入金額が住宅ローン控除の借入限度額を超えた場合は、借入残高のうち一部が税額控除の対象外になる場合があります。
団信には主債務者しか加入できない
先述の<収入合算・ペアローン・単独ローンの違い>の表を見てわかるとおり、収入合算の場合に団信に加入できるのは主債務者だけです。連帯保証人となっている収入合算者は、団信に加入することはできません。共働きで家計をやりくりしている家庭の場合、連帯保証人に万が一が起きた際には主債務者の住宅ローン残高はそのまま残り、さらにその他の生活費についても主債務者が負担することになります。
このようなケースの備えとして、生命保険に加入するという手段があります。
住宅ローン「ペアローン」のメリットについて
次に、ペアローンのメリットを確認しておきましょう。
申込者2名とも住宅ローン控除を利用できる。
ペアローンは、収入合算と異なり、2名それぞれが主債務者となってローンを組む借入方法です。ペアローンの最大のメリットは、申込者2人の収入に対する節税効果が期待できる点になります。ペアローンを組んだ2人が住宅ローン控除の恩恵を受けることが可能です。
この2024年時点で定められている住宅ローン控除の条件は下記の表のとおりです。
<新築・買取再販住宅の場合>
居住年ごとの借入限度額 (控除期間) |
||||
---|---|---|---|---|
2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | |
認定住宅 長期優良住宅 認定低炭素住宅 |
5,000万円 (13年) |
4,500万円 (13年) 子育て世帯・若者夫婦世帯は5,000万円 |
4,500万円 (13年) |
|
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 (13年) |
3,500万円 (13年) 子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円 |
3,500万円 (13年) |
|
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 (13年) |
3,000万円 (13年) 子育て世帯・若者夫婦世帯は4,000万円 |
3,000万円 (13年) |
|
一般の住宅 (省エネ基準を満たさない住宅) |
3,000万円 (13年) |
0円 2,000万円 (2023年末までに建築確認を受けた場合) (10年) |
||
控除率 | 年末借入残高×0.7% | |||
所得要件 | (1)合計所得金額2,000万円以下 (2)合計所得金額1,000万円以下 |
|||
床面積要件 | 所得要件(1)の場合は50m2以上 所得要件(2)の場合は40m2以上 ((2)は新築等の認定住宅等の場合で、2024年末までに建築確認を受けた場合) |
<中古住宅の場合>
居住年ごとの借入限度額 (控除期間) |
||||
---|---|---|---|---|
2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | |
認定住宅 長期優良住宅 認定低炭素住宅 |
3,000万円 (10年) |
|||
ZEH水準省エネ住宅 | ||||
省エネ基準適合住宅 | ||||
一般の住宅 | 2,000万円 (10年) |
|||
控除率 | 年末借入残高×0.7% | |||
所得要件 | 合計所得金額2,000万円以下 | |||
床面積要件 | 50m2以上 |
例えば中古の認定住宅をペアローンを利用して購入した場合で、年末時点に1人3,000万円の住宅ローン残高がある場合は、夫婦で合計6,000万円の住宅ローン控除を受けられることになります。税額控除の金額は、「3,000万円×0.7%=21万円」の2人分なので42万円になります。
もし、単独の借り入れで6,000万円の借入残高があったとしても、住宅ローン控除の対象になる借り入れ限度額は、中古の認定住宅の場合は1人あたり3,000万円だけとなります。住宅ローン控除をペアで利用するために、ペアローンを選択する人は少なくありません。
契約者2名とも団信に加入できる
契約者両名とも団信に加入可能です。亡くなった人の分の残債は、保険で完済できます。ただ、後述のペアローンのデメリットの項でも解説しますが、残された人の住宅ローン返済負担はそのままになってしまう点には注意が必要です。
住宅ローン「ペアローン」のデメリットについて
ペアローンのデメリットについて以下も確認しておきましょう。
諸費用が2人分かかる
ペアローンのデメリットは費用が2人分になることです。住宅ローンを組む際の費用は、事務手数料や登記関連費用等のことをいいます。
多くの金融機関では、借入金額に一定の手数料率を乗じて事務手数料を計算します。SBI新生銀行では事務手数料を「借入金額×2.2%(消費税込み)」と定めているので、例えば借入金額が5,000万円の場合は、110万円の事務手数料が必要になります。5,000万円を1人2,500万円ずつのペアローンにした場合でも2人合わせての事務手数料は110万円となるため、ペアローンだからといって必ずしも事務手数料が高くなるわけではなく、借入金額によって手数料額が決まります。
登記関連費用については、登録免許税は債権額に税率を乗じた金額になるため、借入金額が税額に影響します。ゆえにペアローンだからといって必ずしも登録免許税が高くなるというわけではありません。しかし、司法書士に手数料として支払う報酬は2契約分が必要になるのが一般的です。
万が一のときでも残された人の残債は残る
夫婦2人共が団信に加入できる、というのがペアローンのメリットですが、見方を変えると、「2人のうちどちらかに万が一が起きた場合、残された人の残債は残ってしまう」というデメリットとも解釈できます。扶養家族がいる場合は、残された方は自身の住宅ローンの返済と生活費の支出を1人で負担することになります。家族が1人欠けたからといって生活費が半分になるとは限りません。ペアローンを組む場合は、2人のうち、それぞれに万が一が起きる場合のケースでシミュレーションをしておく必要があります。
ペアローンの夫婦連生団体信用生命保険
上述のとおり、ペアローンには「2人の債務者のうち、片方に万が一が起きた際に残された人の残債は残ってしまう」というデメリットがあります。
このようなデメリットを解消するために、最近ではペアローンを組んでいる2人のうち、どちらか1人に万が一があった際に、2人分の残債が保険金で完済される夫婦連生団信が利用できる金融機関があります。
夫婦連生団信を利用する場合は、一般的に住宅ローンの金利に上乗せが必要になります。増加する支払い利息に対して、保障内容が費用対効果の観点で合理的かどうかを検討しましょう。
収入合算・ペアローンの注意点とは?
住宅ローン申込時に、申告する収入を増やすことができる「収入合算」および「ペアローン」ですが、メリットばかりではありません。注意点もあるので確認しておきましょう。
どちらの方法にも共通することですが、「借入金額を増やしすぎてしまう可能性がある」「片方の収入が途絶えた際に返済が厳しくなる」といった注意点があります。
また、収入合算及びペアローンの両方においてリスクとなるのが「離婚」です。
収入合算の場合で離婚が生じた場合
収入合算の場合で離婚が成立し、主債務者がそのまま物件に住み続けることになった場合、収入合算者である連帯保証人は、自身が住まない家のための連帯保証をしていることになってしまいます。もし、主債務者の返済が滞った場合には、連帯保証人に返済義務が生じます。収入合算は2人の収入を前提とした借入金額を設定していることが多いため、離婚後に主債務者の返済が苦しくなる可能性はないとは言い切れません。離婚時には、物件を売却するなどして住宅ローンを完済するか、連帯保証を外すように金融機関に相談するなどの対策が必要になります。
ペアローンで離婚が生じた場合
ペアローンは物件を共有名義で購入しているため、離婚後にどちらがその物件に住み続けるかの話し合いがまとまらない可能性があります。平等な方法は、離婚時までに物件を売却し住宅ローンを完済することです。しかし、物件の売却価格が残債未満の場合は、債務のみが残ってしまうことが考えられます。その場合には、手元の金融資産を繰上返済に充てなければならない可能性があります。抵当権を設定している金融機関ともよく相談の上、最善の選択肢を選択する必要があります。
お申し込み方法
SBI新生銀行では、収入合算・ペアローンともにWEBからお申し込みいただけます。
ペアローンのお申し込みには、お二人それぞれお申し込みが必要です。お二人分のお申し込みが確認でき次第、お手続きいたします。なお、お一人目のお申し込み後10日以内に、お二人目のお申し込みが確認できない場合、お一人目のお申し込みを取り下げたものとみなす場合があります。
紙でのお申し込みをご希望の場合は、以下よりお電話にてお問い合わせください。
- CFP(R)
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
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本稿は、執筆者が制作したもので、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。
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[2024年11月1日現在]