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コロナ禍からの回帰、日銀の金融政策が住宅ローンに与える影響は?

コロナ禍からの回帰、日銀の金融政策が住宅ローンに与える影響は?
  • 本稿の内容は2023年9月21日時点の情報に基づきます。

新型コロナウィルスの感染拡大から年数がたち、ワクチンの普及などの成果もあったことから、私たちの生活も以前の状態に戻りつつあります。

この間、日本銀行(日銀)は金融緩和政策を一層推進してきました。しかし国内での株価・物価の上昇、諸外国の動向の影響もあり金融緩和の出口が気になっている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、金融緩和政策が終了した際に、住宅ローンにどのような影響が生じるのかを解説します。

日銀の金融政策の動向

日銀の金融政策は、短期金利に対する政策と長期金利に対する政策に分れます。短期金利に対する政策は、マイナス金利の導入です。これについては後述するので、ここでは長期金利に対する政策を掘り下げます。

本記事執筆時点(2023年9月)では、「日銀は長期金利の上昇1.0%までは容認している」と解釈している人が多いです。これはどういう意味なのかを解説をしていきます。

長期金利に対する金融政策は2016年1月に導入された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」をはじめとして、同年9月に「長期金利操作付き量的・質的金融緩和」が導入されたことに端を発しています。この金融政策により長期金利の操作目標について、日銀は「10年物国債金利が概ねゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行う。」と定めました。日銀が国債の買い入れを行うことで、長期金利の調整を行っているのです。この金融緩和がスタートして以降、10年物国債の金利は概ね0%程度で推移してきました。 しかし、2021年3月にこれまでは買い入れを行うことのみとしていた長期金利の操作方針に加え、イールドカーブ・コントロール*1の運営を柔軟に行うため、金利の変動幅を±0.25%程度にすることを明確化しました。その後2022年12月に長期金利の変動幅を±0.5%程度に拡大することを決定、2023年7月に変動幅は±0.5%程度としながらも、1.0%まで上昇したら指値オペ*2を実施する方針を打ち出しています。これは「日銀は長期金利が年1.0%までに上がるまでは、指値オペに動かない」すなわち「許容している」と解釈することもできます。実際、長期金利は2023年9月中、年0.7%前後で推移しており、日銀はこの金利を一気に抑え込む動きは見せていません。

このように、日銀は、長期金利を0%に押さえ込む圧力を徐々に緩める方向に動いてきました。それに伴い長期金利は近年上昇傾向にあります。

  1. イールドカーブとは、期間の短い金利と長い金利をつないだ利回り曲線。イールドカーブ・コントロールは1年以下の短期と期間10年の長期という2つの金利を操作して金利を調整すること。
  2. 日本銀行があらかじめ決まった利回りで金融機関から国債を無制限に買い入れる公開市場操作のこと

日銀の金融緩和とはいったい何?

日銀の金融緩和で具体的に行われることは、以下のような市場への資金供給です。

  • 積極的な国債の買い入れ
  • ETF(上場投資信託)の買い入れ
  • J-REIT(不動産投資信託)の買い入れ
  • コマーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れ
  • 短期金利の政策にマイナス金利を適用

上記4つの買い入れは2010年から継続して行われています。この資金供給で何が変わるのでしょうか。日銀が国債やETFなどの買い入れを行い、市場へお金を流入させると、市場のお金が増えます。

一番下の短期金利の政策にマイナス金利を適用とは、どういった意味なのでしょうか。これは、金融機関が日銀に預け入れる資金のうち、政策金利残高に対してマイナス金利を適用するという意味です。この政策をおこなうと、金融機関が日銀に預け入れをしていたお金が貸出金として市場に流れやすくなります。市場のお金の流通量を増やすことに繋がるということです。マイナス金利は預けてあるお金が減ることを意味します。金融機関はマイナス金利で日銀に資金を置いておくよりも、融資等に活用した方が合理的、ということです。

お金が増えると市中金利が低くなるため「企業の資金調達が楽になる」「市場金利の低下や低い水準での維持」などが期待できるのです。

今、住宅ローンを組むなら、固定金利か?変動金利か?

ここまでは日銀の金融緩和政策についてお話をしてきました。では、この金融緩和がどのように住宅ローンの金利に影響を及ぼすのか、そこから固定金利を選ぶのか変動金利を選ぶのかを考えてみましょう。

まず、固定金利は長期金利の影響を受け、変動金利は短期金利の影響を受けるということを覚えておいてください。

日銀が長期金利を0%に抑える圧力を緩めることで長期金利が上昇すると、住宅ローンの固定金が上昇してきます。

一方、短期金利への政策であるマイナス金利が維持されているうちは、変動金利が上がる可能性は低いということです。

実際、日銀が長期金利に対する方針を変更してきている影響で、長期金利が上昇し、固定金利は上昇基調になっています。では、まだ金利が低い変動金利を選べばよいかというとそうとも言い切れません。

確かに変動金利は過去最低水準にまで落ちてきています。しかし、住宅ローンは長期間にわたって利用する商品であり、金利が上昇するリスクはあります。住宅ローンの金利を選ぶ際は、自身のライフプランを検討してから選ぶことを心がけましょう。

この先、家計支出の増加が見込まれる方であれば固定金利が安心です。しかし変動金利は固定金利より低金利という魅力があります。将来の金利上昇に自身の家計が耐えられるかシミュレーションをして、問題がなさそうであれば変動金利を選ぶのも良いでしょう。将来のことは誰にもわかりません。このことを念頭に置いて、安易に「ずっと金利を変えたくないから固定金利」「金利が低いから変動金利」とするのではなく、家計がどの程度までの支出に耐えられるのかをシミュレーションすることが大切です。
こちらで変動金利・固定金利の選び方のポイントをまとめておりますので、ご一読ください。

住宅ローンの金利上昇への対策

先述の通り、金利動向は予測することが難しいです。そのため金利上昇に向けた対策が不可欠になります。対策で最も有効な手段が「繰上返済」です。住宅ローンは毎月定額を返済していく方式ですが、余裕資金ができた際に毎月の返済とは別に返済をすることができます。

繰上返済をすることで住宅ローンの残高が減少し、返済期間が当初の返済期間よりも短縮されます。住宅ローンは、残債が多く、返済期間が長いほど、金利上昇時の毎月返済額の上昇幅は大きくなります。そのため金利上昇が起こった際に、繰上返済で残債を減らし、返済期間を短くしておけば、毎月の返済額の上昇を抑えることができるということです。また返済期間を短縮するということは金利上昇リスクにさらされる期間も短縮することと同義になりますので、合理的な手段と言えるでしょう。
繰上返済についてはこちらで更に詳しい内容をご紹介しておりますので、ご一読ください。

今後の金利動向をチェックしておこう!

冒頭で述べましたが新型コロナウィルスの感染拡大で低迷していた経済は、一気に動き出しています。国内の外国人観光客も増加傾向にあり、景気は良い方向へと向かっているのかもしれません。しかし、景気が良くなるということは、金利が上昇する可能性も高くなるということです。今後、「住宅ローンを組みたい」「借り換えをしたい」と考えている人は、景気や市場金利、住宅ローンの動向などをこまめにチェックしておくようにしましょう。

執筆者
遠藤様

遠藤功二

えんどう こうじ

  • CFP(R)
  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)

株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品の商品説明書等をご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる元本割れなどの固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。

本稿は、執筆者が制作したもので、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。

  • 本資料は情報提供を目的としたものであり、SBI新生銀行の投資方針や相場観等を示唆するものではありません。
  • 金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
  • 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性をSBI新生銀行が保証するものではありません。

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  • 変動金利(半年型)、当初固定金利をご選択された方は、当初借入金利適用期間終了後、変動金利(半年型)が自動適用となります。
  • 変動金利(半年型)、当初固定金利を利用されている方は、金利変更時に当初固定金利をご選択いただくことも可能です。ご選択にあたっては、手数料5,500円(消費税込み)がかかります。
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[2024年11月1日現在]