住宅ローンのガン団信は必要?保障内容と上乗せ金利を解説
住宅を購入する人の多くは「住宅ローンをちゃんと完済できるかな」という不安をお持ちだと思います。特に、住宅ローンの借り入れ後に病気になって働けなくなったときのことを想像するとより心配になると思います。
一般的に、民間の金融機関で提供されている住宅ローンには、団体信用生命保険(以下、団信)が付いており、債務者が死亡または高度障害になった際に、住宅ローンが完済される仕組みになっています。しかし、一般的な団信は、ガンにかかっただけでは住宅ローンは完済されません。そのため、ガンの治療によって働けなくなるケースや、ガンの治療後に収入が減少してしまうケースには対応できていないことになります。
そのようなケースに備えて、最近は多くの金融機関でガンと診断されると住宅ローンが完済される「ガン団信」などと呼ばれる疾病保障が提供されています。この記事ではガン団信の商品性と必要性について解説します。
団体信用生命保険とは
民間の金融機関で提供されている住宅ローンは、原則として団信への加入が必須となっています。
一般的な団信の保障は「被保険者(債務者)の死亡・高度障害時に住宅ローンの残債と同額の保険金が支払われる」といった内容になっています。また、団信の保険料は金融機関側が負担するのが一般的です。
例外として、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」が挙げられます。フラット35には、団信が付帯されていないプランもあります。
住宅ローンと団信がほぼセットとして取り扱われている民間の金融機関の場合は、健康状態や病歴などを理由に団信の審査に落ちてしまうと住宅ローンを借りることができません。団信なしの住宅ローンは、そのような人向けの商品ですが、団信なしで住宅ローンを借りると、万が一の際に残債が遺族に引き継がれてしまう可能性がある点には注意が必要です。
したがって、「住宅ローンは団信に加入できる健康なうちに借りる」というのは1つの賢明な考え方といえます。
高度障害とは
ここで、一般的な団信に付帯されている「高度障害」について、解説をしておきます。高度障害は、主に下記のような状態が当てはまります。
【高度障害の内容】
- 両目の視力を失い、回復の見込みがない
- 言葉を一切話せなくなった
- 食べ物を一切飲み込めなくなった
- 中枢神経系や精神の障害によって、一生常に介護が必要になった
- 胸や腹の臓器の障害により、一生常に介護が必要になった
- 両手首から先を失った、または機能を失った
- 両足間接から先を失った、または機能を失った
- 片方の手首から先を失い、片方の足間接から先を失った(左記は機能を失う状態も含む)
- 片方の手首から先を失い(機能を失う状態を含む)、片方の足間接以上を失った
ここで気づくことは、高度障害は「かなり重度の状態」ということです。「怪我をして後遺症が少し残った」という程度は高度障害になりません。また、高度障害の判定は、死亡と比較すると線引きがわかりにくい面もあります。具体的な保障内容・判定基準は、団信を提供している保険会社が出している情報で確認しましょう。
ガン団信とはどんな商品?
ここまでで解説した死亡・高度障害保障付きの団信は多くの金融機関で「一般団信」と呼ばれています。ガン団信は一般団信に、ガンの罹患時にも残債が完済される保障が付いた団信です。
国立がん研究センターの2019年のデータによると、日本人が一生のうちでガンと診断される確率は、男性で約65%、女性で約51%だそうです。ガンになる確率は、年齢とともに増加していくため、住宅ローンの返済期間を25年〜35年といった長期で設定している人が、ガン団信に加入するのは合理的判断だといえそうです。
ガン団信のメリット
ガン団信のメリットは、ガンと診断されただけで残債が保険金で完済されることです。たとえば、5,000万円の残債がある状態でガンに罹患したら、5,000万円分の保険金が支払われます。そのため、ガンを治療している最中に住宅ローンの返済に悩まされることはなくなりますし、ガンが問題なく治癒した場合、住宅ローンのない家が手元に残ることになります。
例えば、住宅ローンを利用していると完済前に、自宅を賃貸することはできません。住宅ローンは債務者が自宅として住むことが利用条件になっているためです。
しかし、住宅ローンを完済してしまえば、自宅をどのように活用しても自由です。
最近は治療の技術も進んでおり、ガンは治る可能性が十分にある病気になったといえます。ガンの罹患自体は望ましいものではありませんが、ガン団信に加入していれば、ガンの罹患によって、住宅ローンの返済に悩まされることがなくなりますし、「住宅ローンがない家」を手にできる可能性もあります。
ガン団信のデメリット
ガン団信のデメリットは、住宅ローンの金利が上がってしまうことです。たとえば、SBI新生銀行ではガン団信を選択すると、住宅ローンの金利が一般団信よりも年0.1%金利が上乗せになります。年0.1%の金利上乗せがどれほど返済額に影響するかを見るために、下記表を作成しました。
団信の種類 | 一般団信 | ガン団信 |
---|---|---|
借入金額 | 3,000万円 | |
借入期間 | 35年 | |
返済方法 | 元利均等返済 | |
借入金利 | 0.65% | 0.75% |
毎月返済額 | 79,880円 | 81,235円 |
総返済額 | 33,556,854円 | 34,128,266円 |
年0.1%の金利で増加する返済額は、3,000万円の借り入れ、35年ローンで月1,355円、35年間の総返済額の差は571,412円です。ガン団信で得られる保障の価値と返済額の増加分を比較して、検討することが大切です。
ガン団信加入時の注意点
ガン団信の加入時には、以下の注意点があります。
【ガン団信加入時の注意点】
- ガン特約を後から外すことができない
- 借入限度額が一般団信と異なる場合がある
- 借入時の上限年齢が一般団信より低い
1つ目の注意点はガン保障の特約は、途中で外すことができない点です。ガン団信を選択することによって上乗せされた金利は完済まで続きます。借り入れ前には、キャッシュフロー表を作り、返済に無理が生じないかどうかを確認しましょう。ちなみに、ガン保障の特約を途中から付加することはできません。
2つ目の注意点は、借入限度額が一般団信よりも低くなってしまう場合がある点です。たとえば一般団信利用者の借入限度額は3億円までなのに、ガン団信利用者は1億円までとなっている金融機関もあります。
3つ目の注意点は、ガン団信は買い入れ時の上限年齢が一般団信よりも低い傾向がある点です。一般団信の対象者は20歳以上65歳以下でも、ガン団信の上限年齢は50歳に設定されている金融機関が多くなっています。
ガン団信の加入に迷った際は、金融機関に相談しよう
住宅ローンを借りている人にとって、返済中に自身が他界するケースは現実的に想像できないものだと思います。実際、厚生労働省発表の令和3年簡易生命表によると、日本人で65歳まで生きる人の割合は、男性で約89%、女性で約94%になっており、若くして亡くなる方は少数派です。しかし、ガンについては「人間ドックでたまたま見つかった」ということもめずらしくありません。一般的に、がんは早期で見つかれば十分に治癒のチャンスがある病気といわれていますが、治療後に後遺症が残った際には、収入に影響が出ることも考えられます。ガン団信の加入に迷った際には、増加する返済額と保障の価値について、金融機関に相談をしながら考えてみるのも一案です。
- 本稿の内容は2022年12月に作成したものです。
- 新生銀行は2023年1月4日に行名を「SBI新生銀行」に変更しており、変更後の名称で記載しています。
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[2024年11月1日現在]