自営業・個人事業主の方が住宅ローンの申し込みをするポイントは?
「自分は自営業だけど住宅ローンは組めるの?」という不安をもつ人は多いと思います。会社員と比較して収入の安定性が不安視されやすい自営業の方ですが、もちろん住宅ローンを組めないというわけではありません。実際、これまで多くの自営業の方が問題なく住宅ローンを借りています。
この記事では、自営業の方が住宅ローンを申し込む際に押さえておきたいポイントについて解説します。
自営業以外の方はこちらをご覧ください。
なお、この文章中における「自営業」とは、法人化していない個人事業主を指します。
目次
自営業の方の住宅ローンお申し込み条件とは
会社員・公務員の方と比べて、自営業の方は、申込時の条件が以下のように異なる場合があります。たとえば、SBI新生銀行の住宅ローンの商品説明書を見ると、申し込み時の条件として下記のようなことが書かれています。
- 前年度税込年収が300万円以上の正社員または契約社員であること。
- 自営業の方については業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得(経費控除後の金額)を有すること。
上記のようにSBI新生銀行の住宅ローンを自営業の方が利用するには、業歴2年以上が必要なことがわかります。
- 他の金融機関では業歴を3年以上とするケースが多くあります。実際、自営業をスタートしてからビジネスが安定するまで、一定の期間がかかるため、2~3年の業歴を必要としていることについては、特段、不自然ではないと思います。
自営業の方が住宅ローン審査を受ける時の年収条件と計算方法
前項の引用箇所を見てわかるとおり、正社員または契約社員は「税込年収」が年収条件になっていますが、自営業の方については、「所得」が基準になっています。一般的に所得は、収入から必要経費を引いた後の金額です。下記に例を示します。
事業収入(=年収=年商) | 1,000万円 |
---|---|
必要経費 (店舗や工場の家賃、仕入れ代金、光熱費等事業を行う上で必要な経費) |
700万円 |
事業所得 | 300万円 |
仮に必要経費が全て固定費であるなら、この事業を営んでいる人のSBI新生銀行の住宅ローン申し込みにおける年収条件は1,000万円ということになります。1,000万円以上であれば、必要とされる300万円の事業所得が確保されるからです。
ただ、金融機関側は「年収1,000万円」を見るのではなく、あくまでも所得である「300万円」を見て審査します。必要経費に変動費が多く含まれている場合は、年収の目安は掴みにくいと思います。自営業の方は普段は「収入」すなわち「年商」を気にしていると思いますが、住宅ローン審査においては所得(=利益)が重視されるものと理解しておくとよいでしょう。
自営業の方が住宅ローン審査に通りにくい理由
自営業の方は、一般的に住宅ローン審査に通りにくい、といわれています。会社員であれば、勤続年数や収入を基に客観的に審査ができます。たとえば大企業に勤続して10年経つ中堅社員の収入が急減する可能性は低いと考えるのが一般的です。だから金融機関側も融資が可能なわけです。
一方、自営業の方には企業の後ろ盾がありません。有力な取引先との関係悪化や、景気後退等の理由で事業の継続が難しくなった場合、急に収入が断たれてしまう可能性があります。
事業を営んでいると、収入が途絶えても固定費の支出が伴うものです。この支出は生活費とは別にかかります。
また、事業のための負債も審査においてはマイナス要因になります。金融機関は住宅ローン以外の負債も含めて顧客にとって借り入れ額が過大でないかどうかを審査しています。事業用の負債が多い人ほど「借り入れが過大である」と判定されてしまう可能性が高いということです。
自営業の方が住宅ローン審査を通るためのポイント
自営業の方が住宅ローン審査に通るためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
<自営業の方が住宅ローン審査を通るためのポイント>
- 一定の所得を確保した事業年度を経る
- 借り入れ額を抑えめにする
- 担保価値の高い物件を選ぶ
前述のとおり、自営業の方の審査は所得に基づいておこなわれます。仮に収入が一定であるなら、経費削減を意識することが重要だということです。さらなる収益源創出が重要である点はいうまでもありません。
また、「頭金を用意する」「安価な物件を探す」といった形で、借り入れ額を抑えるのも審査に通りやすくする1つの方法です。
物件の担保価値も重要です。金融機関は、債務者が返済不能になった際に、担保物件を売却することによって資金回収に動くからです。
自営業の方が審査に落ちる典型的パターン
ここで、自営業の方が審査に落ちるパターンについてご紹介します。ただ、金融機関は審査に落ちた理由は教えてくれないため、下記はあくまでも落ちてしまった理由として推測されるものをあげています。
<審査に落ちてしまうパターン>
- 所得に対する返済負担率が高い
- 物件の担保価値が低い
- 負債が多い
- 滞納履歴がある
返済負担率とは、年収に占める年間の返済額の割合のことです。先述のとおり、自営業の方は収入ではなく、所得を基準に審査を行います。返済負担率も所得で見るということです。収入が高くても所得が低い人は、審査に落ちてしまう可能性が高いといえます。
また、物件の担保価値が低いと審査に落とされてしまうことがあります。自営業の方は収入の安定性を不安視されやすいため、担保価値に疑義があると審査に落ちてしまう可能性は高くなるといえます。
事業用の設備などで高額な負債を抱えていると、金融機関側が「負債が多すぎる」と判断し、審査に落ちてしまうことがあります。
クレジットカードなどの返済の滞納があると、信用情報機関に氏名が掲載され、ローン全般の審査に通りにくくなります。自営業の方は、会社員のように決まった給与振り込みがあるわけではないため、資金繰りのチェックは重要になります。
自営業の住宅ローン申し込みで提出する書類とは?
次に、自営業の人が住宅ローン申込時に提出する必要書類を見てみましょう。提出書類は、以下のようになっています。
- 以下は一例です。金融機関や住宅購入、借り換えなど目的によって異なる場合もあります。
本人確認のための書類 | (必須書類)
|
---|---|
収入面の審査のための書類 |
|
返済中の借り入れに関する書類 (既存の借り入れがない場合は不要) |
|
物件の審査に関する書類 |
|
本人確認に関する書類や、物件の審査に関する書類は、自営業でなくても必要です。しかし、特に会社員の場合と異なるのは、収入面の審査のための書類です。
会社員の場合、個別に確定申告をしていなければ住民税課税決定通知書などで審査できるケースが多い傾向です。しかし、自営業の場合、確定申告書の控えで直近の所得を確認する必要があります。
自営業の方の住宅ローン控除は注意が必要
住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高に0.7%を乗じた金額が所得税から還付される税額控除の制度(2022年度税制改正後)です。自営業の方が住宅ローン控除を利用する際には、注意が必要です。
自宅を事務所にする場合は要注意!
住宅ローンは、あくまで居住する自宅を購入・建築するときのためのローンとなるため、主に仕事で使う場所のためには使えませんので気を付けてください。
購入する自宅物件を事務所にしたい自営業の方もいるかもしれません。その場合は、居住部分の床面積は50%以上が必須です。
事務所用の床面積が50%超になると、住宅ローン控除も受けられない可能性が高くなります。工場や店舗などのように明らかに事業用と目される箇所が間取り上にある場合は、住宅を購入・建築計画をする時点で税務署に確認しましょう。
- 住宅ローン減税の制度について詳しくは、国税庁ホームページ等でご確認ください。
自営業の方の住宅ローン控除手続き
会社員・公務員の人が住宅ローン控除手続きをする場合は、1年目のみ確定申告を行い、2年目以降は勤務先の年末調整で手続き可能です。
しかし自営業の人が住宅ローン控除を行う場合は、毎年確定申告を行わないとなりません。所得の申告と同時に手続きすることを忘れないでください。
自営業など、フリーランスの人が住宅ローンを申し込む際に知っておきたいことについてはこちらもご覧ください。申込時の注意点、審査のポイントについて解説しています。
経営者の住宅ローンの注意点
SBI新生銀行の住宅ローンの場合、法人の経営者が住宅ローンを申し込む場合も、自営業の方と同様に「業歴2年以上で2年平均300万円以上の所得」が必要です。
法人の経営者であっても、申込時に提出する書類は自営業と同じですが、以下の書類を追加して提出する必要があります。
書類名 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
法人の決算報告書 | 勤務先 (経営している法人) |
|
法人税の納税証明書その1、その2 | 税務署 |
|
- SBI新生銀行の例でご紹介しています。詳しくは住宅ローンを申し込む金融機関で確認してください。
会社経営者の人も自営業の方の人と同様に、返済能力があるかを厳しくチェックされます。法人が連続して黒字状態となっているなど、事業が安定した状態で住宅ローンを申し込んでください。
経営者の住宅ローン契約については、こちらもご覧ください。申し込みの必要書類から審査、住宅ローン控除について詳しく解説しています。
住宅ローンの審査に不安があるなら、一度金融機関に相談しよう!
「住宅ローンが組めるか不安」「自分の借入希望額が借りられるのか知りたい」という自営業の人も多いと思います。
その場合は、遠慮なく金融機関の担当者に相談してみましょう。
最近は、オンライン相談ができる金融機関もあります。
住宅ローンは、この先何年も付き合っていくローン商品です。事前に不安を解消し、納得できる状態で借りるようにしましょう。
- 本稿の内容は2020年4月の情報を基に作成し2023年5月に更新したものです。
- CFP(R)
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品の商品説明書等をご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる元本割れなどの固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。
本稿は、執筆者が制作したもので、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。
- 本資料は情報提供を目的としたものであり、SBI新生銀行の投資方針や相場観等を示唆するものではありません。
- 金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
- 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性をSBI新生銀行が保証するものではありません。
当行では具体的な税額の計算、および、税務申告書類作成にかかる相談業務はおこなっておりません。個別の取り扱いについては、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご確認ください。
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- ご融資の対象物件となる土地、建物に、当行を第一順位の抵当権者とする抵当権の設定登記をしていただきます。
- パワーコール<住宅ローン専用>、SBI新生銀行ウェブサイトにて商品説明書をご用意しています。
- 当行の住宅ローンを既にご利用中のお客さまにつきましては、当行で借り換えをすることはできません。
- 住宅ローンのご融資には当行所定の審査がございます。審査結果によっては、当初借入金利に年0.10%~年0.15%上乗せになる場合がございます。ご希望に沿えない場合もございますので、あらかじめご了承ください。
[2024年11月1日現在]