住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルールとは?
更新日:2023年12月
住宅ローンを変動金利で契約した後の心配事といえば、金利の上昇ではないでしょうか。一般的に、変動金利型の住宅ローンは半年に1回のタイミングで借入金利が見直されます。それまでの借入金利が継続となれば問題ありません。しかし、金利が上がった場合は、毎月の住宅ローンの返済額が上昇します。
実は、多くの金融機関では、金利が上昇した際に、毎月の返済額が急に上がらないための施策として、住宅ローンに「5年ルール」「125%ルール」という制度を適用しています。
このルールがあることで、借り入れ後に金利が変動する、変動金利の住宅ローン利用者は、一定の安心感を得ています。ただ、これら2つのルールには、留意点があります。今回は5年ルールおよび125%ルールとはどのようなものかを、メリット、デメリットを含めて解説します。
目次
住宅ローン変動金利の5年ルール125%ルールとは?
住宅ローンで変動金利を選んだ場合、一般的に借入後から半年に1度の金利の見直しがありますが、仮に金利が上昇したとしても、すぐに毎月の返済額が増えるわけではありません。
住宅ローンの変動金利に、多くの金融機関では、「5年ルール」というものを定めており、金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額が変わらないという「ルール」があるためです。
さらに、5年経過後の6年目からの毎月の返済額は、今までの返済額に対して125%の金額までしか上げることができないという「ルール」も多くの金融機関では、定めています。例えば、元々の毎月の返済額が10万円であれば、金利変更時の毎月の返済額は12.5万円が最大金額になる、ということです。これは大幅に毎月の返済額が変わらないようにするための規則であり、「125%ルール」と呼ばれています。
住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルールのメリット
前述の通り、住宅ローンには、5年ルールがあるため、金利が上昇してもすぐには返済額が変わりません。また、6年目以降も返済額が125%までしか上がりません。それらのルールがあるので、変動金利で借り入れ後に金利が上昇しても、家計の収支が急変しないようになっています。
例えば、養育費などで数年~十数年間、毎月の住宅ローンの返済額を増やすことが難しい場合でも、5年間の猶予があるので、収支を改善することもできますし、6年目以降も元の返済額の125%までしか返済額が増えることがないので、家計が住宅ローンの返済額増加によって突然厳しくなる事態は避けられるでしょう。
住宅ローンの返済期間中に、別に貯蓄を作っておきたい方、車などの大きな買い物をしたい方にとっても5年ルールはメリットとなるはずです。
住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルールのデメリット
ただし、住宅ローンの5年ルールにはデメリットもあります。5年ルールや125%ルールで毎月の返済額が変わらなかったとしても、住宅ローンを返済期間中に完済する義務は免れません。
上昇した金利のために生じた未返済分は、住宅ローン契約の終盤に返済を求められます。これらのルールによってあと倒しした結果、予想以上の金額の請求があるかもしれないのです。
5年ルール、125%ルールはその時点で一時的に「急激な変化」を抑制するための仕組みであって、「総返済額を減らす」仕組みではありません。したがって、このようなデメリットがあるということも忘れてはいけません。毎月の返済額が急激に変化しないとはいえ、住宅ローン金利の動向は注視しておくことをおすすめします。
未払利息とは
住宅ローンの金利が上昇しても、5年ルールと125%ルールがあれば、急激に毎月の返済額が上昇することはありません。
しかし、金利が上がると利息は増えるので、毎月の返済額に占める利息部分の割合が増えていることになります。
金利が極端に上昇した場合は、理論上、毎月の返済額の全てが利息の支払いになることも考えられます。
毎月の返済額よりも利息の支払金額の方が大きくなると、元金の返済は一切進まず、さらに未払いの利息が発生することになります。この支払いきれずに返済が後回しになった利息のことを「未払利息」といいます。
未払利息の怖さ
125%ルールが設けられている場合は、金利の上昇時、25%の返済額の上昇では、支払利息の増加金額に追い付かず、返済額の見直し後でも未払利息が発生し続けることもあり得ます。住宅ローンの債務者は、返済期間の最終時点で、未払利息と元金を全額返済しなければいけません。最終的に、住宅ローンの一括返済のために、金融資産の大部分を失ってしまったり、自宅を売却したりしなければならない可能性もあります。
5年ルールと125%ルールは、金利の上昇による返済金額の急上昇を抑える効果はありますが、未払利息が発生しやすくなり、さらに債務者がその事実に気がつきにくくなるという副作用があります。
変動金利に5年ルールと125%ルールがない場合がある
変動金利の住宅ローンでも5年ルールと125%ルールがない場合があります。そもそも、5年ルールと125%ルールは、変動金利でかつ元利均等返済を選択した場合に適用されるルールです。「元金均等返済」を選択した場合は、一般的に5年ルール、125%ルールは対象外となります。また、後述しますが元利均等返済でも5年ルールと125%ルールがない住宅ローン商品もあります。
- 「SBI新生銀行では、お客さまのトータルでの利息支払い額がより少なく、元金返済をより早く進めることができるようにすべく、「5年ルール」、「125%ルール」は採用されておりません。
元利均等返済とは
元利均等返済とは、毎月の返済額が一定になるように返済する方法です。金利が変動しない限りは毎月の支払金額が変わらないため、返済計画が立てやすいというメリットがあります。
借入当初は毎月の返済額に占める利息部分の割合が大きく、後半になるほど元金の返済部分の割合が大きくなります。金利が上昇した場合は、元金が多額に残っている前半ほど、毎月の返済額の上昇幅は大きくなります。そのため、5年ルールと125%ルールの影響で未払利息が発生しやすくなります。返済期間の後半は元金の返済部分の割合が多いため、金利が上がっても未払利息は発生しにくい傾向があります。
元金均等返済とは
元金均等返済は、返済額に占める元金の返済額が一定になる支払い方法です。元利合計の毎月の返済額は、返済当初が最も大きく、月を追うごとに小さくなっていきます。残債が減っていくにつれて支払利息が下がっていくからです。元金均等返済のメリットは、段々と返済負担が軽くなっていくことです。経済的にも心理的にも将来が楽になるという安心感があります。
一方でデメリットは、家計全体の支出計画が立てにくいことです。元利金等返済のように、毎月の返済額が固定されている場合は、他の支出の予算を立てやすくなります。一方で、元金均等返済の場合は、徐々に返済額が減少していくため、毎月の収支が変動します。そのため、キャッシュフロー表の作成が難しくなり、将来の収支計画が立てづらくなります。
元金均等返済に5年ルール及び125%ルールが適用されない理由は明らかです。もし、これらのルールを適用させてしまうと利払い部分を増やし、元金の返済部分が減ってしまうことになるため、「元金均等返済」という名称にそぐわないからです。「元金を一定額ずつ返済していきたい」という顧客の意向にも反してしまいます。元金均等返済を選択した場合は、金利の引き上げがあると、すぐに毎月の返済額が上昇してしまいます。
元金均等返済を選択したからといって必ず毎月の返済額下がっていくとは限らないことには、注意が必要です。
当初固定金利タイプの住宅ローンには5年ルールと125%ルールがない
当初固定金利タイプの住宅ローンとは、返済期間のうち、定められた当初期間だけは、低金利の固定金利が適用され、当初期間経過後は金利条件が変わるタイプの住宅ローンです。
多くの当初固定金利タイプの住宅ローンでは、当初期間の金利は優遇された引下げ幅が適用されています。そのため、当初期間終了後は、引下げ幅が縮小し借入金利が上がってしまう傾向があります。
一般的に、当初期間終了後に金利が上がるケースに対しては、125%ルールが適用されません。当初期間が5年以下のように短い場合は、元金部分が多く残っているため、金利上昇時に毎月の返済額が25%を超えて上昇してしまうこともあり得ます。
当初固定金利タイプは、当初期間中に期間短縮型の繰上げ返済を積極的に行うことで、金利が上昇してしまう前に完済する予定の方や、借り換え後の住宅ローンが当初期間のみになるような場合に有効です。
そもそも125%ルールは意味がない?
本記事で取り上げた125%ルールですが、実は「このルール、あっても意味がないのでは?」という意見を耳にすることがあります。このような意見があがる理由として以下の点が考えられます。
【125%ルールが意味をなさない理由】
- 日本は長期間低金利だから
- かなり金利が上がらないと125%ルールは役目を果たさないから
- 125%ルールが原因で返済ペースが遅れてしまうことがあるから
(理由1)日本は長期間低金利だから
「変動金利で借りたけど結局ほとんど金利は上がっていない。」
実際に変動金利で住宅ローンを借りた人の多くは、このような体験をしています。日本国内においては、1999年に日銀が打ち出した「ゼロ金利政策」以降、変動金利に影響を与える短期金利はほとんど上がっていません。
下記は、2009年4月から2023年10月までの短期プライムレートの推移です。短期プライムレートとは、金融機関の貸出金利のうち、住宅ローンの変動金利の基とされている金利です。
このグラフからわかるとおり、短期プライムレートは年1.475%の状態で、長期間変わっていません。短期プライムレートは、日銀の金融政策の影響を受けます。本記事執筆時点(2023年11月)において、短期金利に対する政策金利は▲0.1%となっており、2016年に導入された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が維持されています。
もちろん、今後日本の物価が安定的に上昇し、日銀が当該金融緩和政策を解除した際には短期プライムレートが上昇し、住宅ローンの変動金利が上昇する可能性はあります。
(理由2)かなり金利が上がらないと125%ルールは役目を果たさないから
毎月の返済額が一気に25%も上昇するということは、相当な金利上昇が起きているということです。下記は、一定の条件の住宅ローンが、5年経過後に金利上昇に見舞われた場合の毎月返済額を表したものです。
【前提条件】
当初の借入金利:年0.5%
借入額:3,000万円
返済期間:35年
返済方法:元利均等返済
5年経過後の借入金利 | 当初毎月返済額 | 金利上昇後毎月返済額 | 毎月返済額の上昇率 |
---|---|---|---|
年0.5% | 77,875円 | 77,875円 | 0% |
年1.0% | 83,709円 | 7.5% | |
年1.5% | 89,804円 | 15% | |
年2.0% | 96,162円 | 23.5% | |
年2.5% | 102,780円 | 32% |
上記の表を見てわかるとおり、年0.5%の金利が年2.0%、すなわち当初の金利の4倍に上がっても125%ルールは発動されていません。つまり、仮に変動金利の上昇があったとしてもかなり大幅な金利上昇が起きない限り、125%は役目を果たさないということです。
新規借り入れシミュレーション(理由3)125%ルールが原因で返済ペースが遅れてしまうことがあるから
先述のとおり、借入金利が大幅に上昇した場合、125%ルールがあると毎月の返済額がすべて利息の支払いになってしまい、元金の返済が全く進まない事態に陥ることがあります。
下記は、先ほどと同じ条件の住宅ローンの金利が、5年経過後に年10%に上昇した場合の返済額です。元金の返済が後回しになる例をわかりやすく解説するために、極端な例を使用しています。
5年経過後の借入金利 | 当初毎月返済額 | 金利上昇後毎月返済額 | 毎月返済額の上昇率 |
---|---|---|---|
年10% | 77,875円 | 227,952円 | 192.7% |
同条件で125%ルールが適用された場合は、毎月の返済額は下記のとおりになります。
5年経過後の借入金利 | 当初毎月返済額 | 金利上昇後毎月返済額 | 毎月返済額の上昇率 |
---|---|---|---|
年10% | 77,875円 | 97,343円 | 25% |
本来の毎月返済額227,952円と125%ルール適用後の毎月返済額97,343円の差額130,609円は、未払い利息と元金の未返済分で構成され、返済計画上では自動的に後倒しになります。
この例は、金利10%への上昇ということで極端な例ではありますが、125%ルールがあるために、返済が遅れてしまう可能性があるという事実を示しています 。バブル期には実際に変動金利が8%台で、未払利息が発生したり、最後の金利見直し後の返済額が急騰して返済に窮するケースが数多く発生したことがありました。
「金融機関からの請求額をしっかりと支払っていても、返済に滞りが発生する可能性がある」という点は125%ルールの難点だといえます。
ここまで挙げた3点が「125%ルールは意味がない(価値がない)」と言われることがある理由です。
5年ルールと125%ルールがない住宅ローンも登場
5年ルール、125%ルールを採用する金融機関が多い中、最近は変動金利の元利均等返済のタイプでも、5年ルールを採用しない銀行があります。5年ルールがないため、見直し時期に金利が上昇していた場合はそのまま反映され、返済額がすぐに変更されます。金利が急激に上昇していたら返済額も大幅に上がる可能性もあります。
しかし、返済額を変更しない期間や上昇率の制限はないため、住宅ローン終盤で未返済分を支払うという事態が生じることはありません。5年ルールおよび125%ルールがある住宅ローンを選ぶか、それともこれらのルールを採用しない住宅ローンを選ぶか、じっくり考えてから決めましょう。
- SBI新生銀行では5年ルール、125%ルールの適用はございません。
記事のおさらい
5年ルールとは?
住宅ローンで変動金利を選んだ場合は、一般的に半年に1度の金利の見直しがあります。しかし、その際に金利が上昇したとしても、すぐに毎月の返済額が増えるわけではありません。住宅ローンには、「5年ルール」というものがあり、金利が上昇しても、5年間は返済額が変わらないのです。
125%ルールとは?
5年経過後の6年目からの返済額は、今までの返済額に対して125%の金額までしか上げることができないというルールもあります。元々の毎月の返済額が10万円であれば、変更時の毎月の返済額は12.5万円が最大金額ということです。これは大幅に返済額が変わらないようにするための規則であり、「125%ルール」と呼ばれています。
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[2024年11月1日現在]